日本酒雑学 ろ過するお酒と無濾過のお酒
日本酒は、樽酒や古酒を除き、無色透明のものが主流になってしまったが、日本酒は本来、色があっても不思議はない。着色は原料の米や工事、酵母、水に由来する自然の現象と考えられる。ろ過は本来、おり引きで取り除ききれなかった米の破片など不要な固形物を乗り除くために施された。しかし、昭和一桁のころ、吟醸酒造りが盛んになり、色のない酒が鑑評会で高く評価される傾向があって、活性炭を使ったろ過が行われるようになったという説がある。
炭素ろ過というものは、粉末状の活性炭を酒のタンクに直接入れて、余分な雑味や色を吸着させてから、濾過機に通す方法。
使用する活性炭の種類や量は蔵や作る酒によって異なるこの活性ろ過によって色調は無色透明に近づくか無色透明になる。雑味も取り除かれすっきりときれいな味わいになりやすいといわれるが、一方でお酒の風味もある程度、取り除かれてしまうというマイナス面がある。よって活性炭を使うかどうか、使うとしてどのくらい量を使うか蔵が判断することになる。蔵によっては、一定の熟成期間を設けることを前提に炭素ろ過によって酒をできるだけ変質しにくい状態に置きまた、色やにおいが過剰につくのを避けるとしている。
現在、最も一般的なろ過の方法は、おり引き後、ろ過フィルターを装着したろ過機に酒を通す方法で、濾過助剤として珪藻土やセルロースが用いられる。またメンブランフィルターや中空糸膜を用いた精密ろ過器も登場していて、炭素ろ過を含め、これらを併用したろ過も行われている
さて無濾過については、酒税法上の明確な定義はなく「一切ろ過機行為をしないこと」とは限らない。不要な固形物を取り除くために、粗い目のフィルターを通すのはろ過ではないと主張し、ボトルに無濾過の表示をする蔵元もいる。
それほど近年は、無濾過の酒が人気で、またろ過を軽めに抑えたため色が残る酒もしばしば目にするようになって、日本酒の色調についてのコメントに白ワインのような表現が使われるようになってきた。
無濾過酒は一般に(かつ丁寧に造られた酒であることを前提に)しぼったままのさわやかさや旨味の濃さが魅力。ろ過した酒は飲み口がスムーズですっきりとした味わいが特徴とされる。